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整形外科主任の厳しさと優しさ~新米看護師の体験談~

このところ、看護師の転職が非常に多くなっていますが、その動機となっているのが人間関係です。特に新人看護師の場合には「同僚より仕事を覚えるのが遅くて怒られてばかり」「先輩が異常に厳しくていつも泣いている」、そんな理由が多いようです。

ただ、少し考えてみてください。
先輩看護師は、本当に新人が憎くて泣かせたくて怒っているのでしょうか?
背景に、様々な理由があって怒りたくなくても怒っているのかもしれません。

筆者がまだ就職したばかりの頃、整形外科の回診で術後のある患者さんのガーゼ交換の介助をするように師長に指示されました。

その患者さんの担当医が整形外科部長だったのですが、その気むずかしいことで有名な部長の介助は主任ナースが行うようにと部長自身が指名していたので、他のナースは介助をしたことがありませんでした。

それなのに新人の私が指名されてしまい、それも師長の指示ですから私も主任も断ることができませんでした。

そこで主任は私を処置室に呼び、部長のガーゼ交換の手順を教えてくれました。
5回ほど練習をしたときに部長回診がはじまりました。

その患者さんのところで、主任は私が介助にあたることを部長に伝えました。ガーゼ交換がはじまったのですが私は緊張で手が震え、部長に渡すはずのイソジン綿球を床に落としてしまったのです。

するとその瞬間、私は主任に「出て行きなさい!」と言われ、その患者さんの部屋から追い出されました。肩をぐっと掴まれて、無理やり押し出されたのです。

そのとき私は、もう1つ綿球を改めて渡せばいいだけの話なのに、なんで部屋から出されなければならないのかが全く理解できず、悲しくなりリネン庫に駆け込んで泣きました。

けれども、他の業務が待っているので瞼を腫らしてナースステーションに戻ると、ある先輩が話してくれました。

実は、以前にも同じようなことがあり、そのときの新人看護師も失敗したそうです。

そうしたら部長がその新人にグチグチと文句を言い出し、挙句の果てには「お前は看護師を辞めるべきだ」と吐き捨てるように言い、部屋を後にしたそうです。

その後、この新人は看護師を辞めてしまったと言います。

主任は、部長の文句を新人に聞かせてしまった自分に責任があると考え、とても苦しんでいたそうで、今回私を部屋から無理やり追い出したのは、部長の汚い愚痴を聞かせないためだと、そう教えてくれました。

つまり主任は、新人である私を守ってくれたのです。

新人看護師というのは、人生経験がほとんどないに等しいこともあり、特に緊張状態の続く職場ではまわりが見えないものです。その職場の状況や、医師がどんな人なのかもはっきりとは分かりません。

新人が怒られるのは、価値のある人材だと期待されているからなのです。
怒ってばかりの先輩は、裏側に優しさを隠しているのかもしれません。

今日の部屋持ち:いずみん

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