この7月に公益財団法人日本医療機能評価機構が、2010年1月から2014年3月までに報告された医療事故について調査した結果を発表しました。
医療事故の件数やその内容についてまとめて公表しているわけですが、中でも注目すべきは、入職して1年以内の新人看護師が起こした医療事故のうち薬剤に関連する事故の割合が、職歴1年以上の看護師と比較すると2倍近くにのぼる、という点です。
新人看護師が起こした事故の中で、最も多かったのが療養上の世話によるものでした。
これは、例えば患者さんがケアの際に誤ってベッドから転落するなどのものです。
こういった事故も、場合によっては患者さんを寝たきりにしてしまう可能性は高いわけですので、確かにあってはならないものです。
ただ、こういった事故が多いのはこういったケアをする機会が多いから、という点を考えれば、ある程度納得はできます。
問題は、その次に投薬ミスなどの薬剤に関する事故が多いという点です。
例えば、希釈して使うべき薬剤を希釈しないまま投与するなど、一歩間違えばそのまま患者さんの命を奪ってしまうようなミスが、実際に起こっているのです。
同じ調査で今年の1月~3月にかけてのヒヤリ・ハット事例を公表しているのですが、その約60%が薬剤の投与に関するものでした。
薬剤の投与ミスは、患者さんの転倒より怖いものです。
それは、患者さんの命に直結するからです。
もちろん、現場の医療従事者はこのことをよく理解しており、新人看護師にも指導はなされているはずなんです。
それでも、新人看護師による薬剤事故は毎年、同じように起こっており減ってはいません。
では、なぜ新人看護師の薬剤事故は起こってしまうのでしょうか?
理由は、新人を独り立ちさせる時期が早過ぎる、これに尽きると思います。
まず、新人看護師のミスが起こっている時期ですが、多くは新人がどうにか慣れてくる入職から半年くらい経った頃に多く起こっています。
この時期というのは、プリセプターが新人にいろんな業務を1人でさせてみようという時期でもあります。
そういう時期に、新人は自己判断で業務を行うことでミスをしてしまっているのです。
この、新人を独り立ちさせようとする時期は、プリセプターはそろそろできるだろうと思っており、新人は不安だけど1人でやらなくちゃ、と気負っている、そんな状況です。
だから、新人はあまり先輩に頼ってばかりでは申し訳ない、そんな気持ちもあり分からなくても自己判断してしまっているのです。
新人看護師は、学校で看護の勉強を重ねてきたとはいえ、現場に出たらほぼ素人と同じで何もできません。
そこから半年やそこらで、1人前の看護師として動けるはずはないのです。
そんな素人同然の看護師に、患者の命を左右する薬剤を一人で扱わせることに問題があるのです。
例えば、薬剤の扱いは入職後1年間、絶対に先輩看護師と一緒に行う、と決めるだけでミスは大幅に減少するはずです。
新人が配属されたら、その部署全体で育てていく気持ちを持って、少なくとも1年間はしっかり新人に付き添ってほしいものです。
今日の部屋持ち:いずみん