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看護師不足の根本的な原因と打開策を考える

厚生労働省の報告によれば、約90万人の看護職員が全国の病院に勤務しており、診療所やクリニックと言われる医療機関には約30万人、他の公的機関などに勤務している看護師は約20万人ということです。全国で働く女性の数は約2600万人とされているので、そのうちだいたい20人に1人が看護師ということになります。

数字の上だけで見ると、実に多くの看護師が働いている印象です。しかしながら、これだけ多くの看護師が就労しているにも関わらず、医療の現場はいつも看護師が不足している状態は数十年前から変わりません。厚労省の試算によると、看護師の数は需要に対して数万人は足りないのだそうです。

毎年毎年約5万人もの新しい看護師が誕生しているにも関わらず、相変わらず看護師が不足する理由はその離職率にあります。例えば2010年を例に見てみると、常勤看護師の離職率は約11.2%にのぼります。新卒の看護師も約8.6%が離職しており、就業数は約2万人に留まっているのです。

では、看護師がこんなにも離職してしまい、不足している根本的な原因は何でしょうか?それは、看護師を最も必要とする職場が、看護師のために労働環境を整えていないこと、この1点でしょう。

新しい医療機器のために資金を捻出する病院は多くあっても、看護師という人材を確保して育成し、長期に渡り就労してもらうための、いわゆる福利厚生の充実は後回しなのです。実際に、福利厚生の充実に取り組む医療機関もありますが、現在の看護師の生活に必要なものとかけ離れていることも多く、いつも後手であることは否めません。

細かな問題のすべてを改善しようというのは、無理な話かもしれません。ただ、育児真っ最中の看護師が復職しやすいような環境を整えるだけでも、離職率は減少することでしょう。例えば、残業などに備えて病院内に保育園や学童を設置する、夜勤に出やすいように24時間いつでも預かってくれる体制を整える、子どもが病気だからと休まなくてもいいように病児を預けられるようにする、これだけでもかなり働きやすくなるはずです。

また、最近増加傾向にある男性看護師の育成に、さらに力を入れることも視野に入れるべきでしょう。看護師の仕事は、患者の移動や移送、体位交換や入浴介助などいわゆる力仕事が多いものです。そういった業務は、どちらかと言えば男性に向いていると言えます。男性なら、妊娠・出産のための休暇は必要ありませんし、ブランクなく働くことも可能です。

医療を提供するのは、病院という建物ではなく、中で働く医師や看護師といったマンパワーです。マンパワーが十分でなければ、いつでも病院にかかれるという生活が破綻します。安心して生活するために、看護師不足の問題を国民全員が考える時が来ているのだと思います。

今日の部屋持ち:いずみん

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