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「あいーと」が患者の食事を変える?

外科系の看護師なら術後の患者の食事に関して、様々に考えたことがあると思います。

術直後はもちろん食べられませんが、食事が開始されたら流動食を経て、きざみ食やミキサー食などに移行していきます。

普通食になるまでにかなりの時間を要する場合もあるのですが、きざみ食やミキサー食というのはお世辞にも見た目や香りが良いとは言えません。

病院だから仕方ないといえばそこまでですが、食事を楽しむという雰囲気には決してなりません。

見るからに治療食で、食欲が湧かないことがほとんどです。
その証拠に、患者さんはこの治療食を残すことが多いです。

ただ、そうなると術後の栄養状態が悪くなるだけでなく、治療も長引いてしまいます。さらには、日々の楽しみが見出せないために、精神的にも落ち込んでいってしまいます。

そこで、そんな術後の患者さんの食事が変わりそうな商品が開発されました。
それが、イーエヌ大塚製薬の「あいーと」です。

この「あいーと」は、見た目は本当に普通の食事とまったく変わりません。
しかし、歯で噛まなくても舌だけで潰せる程度の軟らかさに調整されている食事なんです。

だから、例えば摂食機能が低下してしまった人でも「あいーと」なら普通の食事と変わらない見た目と味の食事を楽しむことができます。

普通食の100分の1から1000分の1の柔らかさに調整されているので、普通の食事ならけっこう噛み応えのあるれんこんでもスプーンですごく簡単に崩せてしまいます。

これは、酵素均浸法というイーエヌ大塚製薬が5年かけて開発した独自の技術が実現したものです。

食材ごとに適した酵素があるんですが、それを適した圧力でそれぞれの食材に注入することで、その素材の形が崩れるか崩れないかというギリギリのところまで軟らかく調整することに成功しています。

通常、ミキサー食にすると食材によっては臭いが強くなって、かなり食べにくくなるものもあるのですが、「あいーと」なら食材の細胞損傷がほとんどないので、食材本来の風味や栄養素、色あいが保たれたままです。

食事の美味しさは、味だけではなく見た目も香りも大いに関係しています。

おいしい食事は精神的に満たしてくれるだけでなく、術後の早期回復に非常に重要です。

見た目や香りがいいと、食欲が湧き少し無理してでも食べようという気持ちになります。結果、治療の成果が出やすくなります。

ただ、この商品は摂食機能の低下した人向けに販売されてはいますが、臨床でミキサー食の代わりに使われているものではありません。

今後、価格などの問題もクリアになり、ミキサーに替わる嚥下調整食として専門家に認められれば、臨床現場で「あいーと」が活躍する日もそう遠くはないのかもしれません。

今日の部屋持ち:いずみん

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