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訪問看護ステーションの新卒採用のワケ

在宅療養中の患者さんにとって訪問看護ステーションの訪問看護師は、ともに治療を行っていく上で必要不可欠な存在であることは間違いありません。

昨今では、在宅での療養を希望する人が多くなって来たこともあって、診療報酬や介護報酬の後押しなどもあり、訪問看護ステーションが非常に多く存在するようになりました。

各診療科に勤める看護師がその科の疾患に焦点を当てているのとは異なり、訪問看護師は患者さんという看護の対象をそのまま丸ごと引き受ける、いわば人間を看護するプロです。

ですから、これまでは訪問看護師に適しているのは、様々な診療科を学び、臨床経験の豊富な人材であると言われてきました。

ところが、最近になって訪問看護ステーションが積極的に新卒の看護師を採用しようという動きに出ています。

日経メディカルによりますと、今年の5月に『昨年1000カ所増えた訪問看護の今 ~訪問看護を始めたい看護師・看護学生へ~』というセミナーが開催されました。

これは、はNPO法人医桜が主催となって行われたもので、都内で訪問看護事業所を手がけるケアプロ(株)と共に企画し実現したものです。

そこでは、訪問看護ステーションの現状と、ステーションには新人看護師のパワーが必要であると語られました。

ケアプロ在宅医療部長の岩本氏は、これまで訪問看護師になりえるのは臨床経験豊富な看護師だけ、と言われてきたがそれはまったくの都市伝説であると言い切りました。

それは現状が示しているとし、例えば東京都内で1つの訪問看護事業所と1つのサテライト事業所を運営している同社のスタッフの平均年齢は、なんと27.8歳ととても若いのです。

つまり、経験がない状態で訪問看護の世界に入ったとしても、実際に現場で1つずつ経験を積み重ねることで、きっちりと仕事ができる訪問看護師になることができる、ということを示しています。

さらに言えば、訪問看護師から経験を積んで、訪問看護の利用者の生活環境や社会資源を含めた、いわゆるアセスメントやケアを得意とする看護師へと成長できるのは、在宅看護の知識を必要とする現代の医療の現場においては大きな強みだと言えます。

新卒の状態で訪問看護を経験して、そこから病院などの臨床の場に移っても十分にやっていけるだけの力はつく、というワケです。

このところ増えている看取り難民と呼ばれる方々を最小限に食い止めるために、24時間365日対応のステーションを増やす必要があるのですが、それには若い力がどうしても必要なのです。

そこで同社では現在、聖路加国際大などとタッグを組んで、訪問看護分野の新卒者の採用・教育プログラムの開発を行っています。

近い将来、それを標準化して新卒の看護師を多くの訪問看護ステーションで活用してもらいたいと考えているそうです。

逆転の発想を持って訪問看護に興味のある新卒の看護師をステーションに送り込もうとする取り組みは、今後の訪問看護に新たな風を巻き起こすことは間違いないでしょう。

今日の部屋持ち:いずみん

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