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生ぬるい環境からの脱却?~新米看護師の体験談~

病院と一口に言っても、様々な種類の病院がありますが、筆者が新卒で就職した病院は、ある省庁の管轄の病院でした。ですから、もともとはその省庁で働く職員とその家族だけが来院できる病院だったのですが、地元の要望もあって、救急外来こそないものの一般開放がなされた大病院でした。

多くの診療科があったため、外来患者数も多く病床も全体で400床を超えていました。政治家や芸能人のための特別室もあり、外来でもスポーツ選手や有名人に会う機会がありました。

 新米看護師として外来に配属された筆者は、そういった大病院の責務などを考える余裕もなく、必死に仕事を覚えるために日々、緊張感を持って仕事に励んでいたのですが、半年くらい経った頃、あるドクターがこう聞いて来たのです。

 「あなたは、外の世界を見たことがありますか?」

どうやら、他の病院で働いた経験はあるかと聞いているようでしたので、
「私は新卒ですので、この病院でしか働いたことはありません」と答えました。

 すると、そのドクターは顔をちょっとしかめて「この病院は大きいけれど、生ぬるい部分があります。できれば、このような環境から脱却して若いうちに外の広い世界を見てきた方がいいですよ」

と言うのです。

私は、ドクターの話はなんとなく分かるけれど、この病院だって多くの診療科を抱えているし、勉強しようと思えばいくらでも勉強できる、と思っていました。だから、外の世界は当分見なくてもいいはずだと考えていました。

しかし、なぜかそのドクターの言葉がずっと脳裏に焼き付いて離れないのです。どうしてそのドクターがそんなことを言ったのか、ずっと気になっていました。

そして、就職から10ヶ月ほど経ったある日、ようやく仕事にも慣れ周りが見えるようになって、そのドクターの言葉の意味が分かったのです。

それは、看護師としてではなく、人間として大きく成長できませんよ、という意味だったのです。

周りを見渡すと、新卒でこの病院の就職して師長になるまでずっと独身で仕事をしている人が多くいました。

省庁の管轄ですから病院の横に独身寮が完備されていました。

そこに住んでいれば、通勤ラッシュを経験する必要がありません。

また、仕事を続けていれば年功序列で、少々経験が足りない看護師であっても昇進していくのです。

きっと、こういうことがドクターには生ぬるいと映ったのだと思います。

そこで私は就職して2年で、この病院を辞めようと決意し退職しました。

今考えると、色んな意味でとてももったいない退職だったのですが、そのとき辞めたことに後悔はありません。

ドクターが言うように、外の世界はとても厳しいものでした。

しかしながら、辞めて得た事のほうがとても大きかったことは確かです。

今日の部屋持ち:いずみん

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